大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和44年(ワ)13414号 判決 1970年11月18日

原告 青柳健三

被告 小野竹之助

右訴訟代理人弁護士 小笠原市男

被告 田治直康

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 秋知和憲

主文

原告の訴はいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

「別紙第一物件目録記載の宅地、並びに別紙第二物件目録記載の建物について、

1、被告小野竹之助、同田治直康は、東京法務局文京出張所、昭和四四年九月五日受付第一六五六二号、小野竹之助よりの所有権移転登記、

2、被告小野竹之助、同鈴木一男は、同法務局同出張所昭和四四年九月一一日受付、

(イ) 第一六九七五号停止条件付所有権移転仮登記

(ロ) 第一六九七四号根抵当権設定仮登記

(ハ) 第一六九七六号停止条件付賃借権設定仮登記

の各抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告等の負担とする」との判決を求める。

二、請求の趣旨に対する答弁

被告小野について、

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求める。第二当事者の主張

一、請求の原因

1、原告は、被告小野に対し、左の連帯保証に基づく事前の求償権を有する。

(イ) 即ち、原告は、債権者訴外和田豊三郎、連帯債務者被告小野竹之助、ほか訴外人四名、金額金七四五万円、借入年月日昭和四四年一〇月六日、弁済期昭和四四年一一月四日利息月七分、期限後の遅延損害金月七分、の債務について、被告小野の委託をうけて右各債務の連帯保証人になった。

(ロ) 被告小野の連帯債務の弁済期は到来した。

2、被告小野は本件宅地、建物の所有者である。

3、右宅地、建物につき、請求の趣旨1記載のとおりの被告田治のための所有権移転登記がなされている。

4、被告小野は右登記名義の抹消を被告田治に請求しない。

5、被告小野には、本件宅地建物以外に財産がなく、無資力であり右登記名義を放置すれば、原告が被告小野に対して有する連帯保証債務の事前求償権を行使できなくなるおそれがある。

6、本件宅地建物について、請求の趣旨記載のとおりの被告鈴木のための各仮登記がなされている。

7、被告鈴木は、昭和四四年一〇月二五日、被告小野の代理人であった原告に対し、前記各仮登記を抹消すると約束した。

8、被告小野は右仮登記名義の抹消を被告鈴木に請求しない。

9、よって、原告は被告小野の債権者として、同被告に代位して、被告小野・同田治に対し請求の趣旨1記載の登記の抹消登記手続を、被告小野・同鈴木に対し請求の趣旨2記載の各仮登記の各抹消登記手続をなすことを、それぞれ求める。

二、請求原因に対する被告小野の答弁

2、3、6については認めるが、その他は否認する。

三、被告田治、同鈴木の態度

適式の呼出をうけながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかった。

第三証拠≪省略≫

理由

原告は、被告小野の債権者として、同被告の被告田治、同鈴木に対する各抹消登記請求権を代位行使するものとして、本訴を提起しながら、被告小野をも各請求の被告としているが、みぎ被告小野に対する訴が、被告適格を欠き不適法であることは、詳言するまでもなく明らかである。

つぎに、原告の被告田治、同鈴木に対する訴については、果たして原告が債権者代位権を行使できる債権者であるかどうかについて、換言すれば、原告の当事者適格を、被告らの態度(不出頭)に拘らず訴訟にあらわれた訴訟資料に基づき職権で調査すると、≪証拠省略≫によっても、いまだ右事実を認めることができない。すると、原告の被告田治、同鈴木に対する訴もまた、原告適格を欠く不適法なものと言わなければならない。

よって、原告の本件訴をすべて却下し、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 安井章)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例